本試験では、事後届出制に関する知識から主に出題されるので、過去問を学習すれば、事後届出制についてはマスターできます。これに対し、事前届出制や許可制に関する出題は少ないので、過去問学習ではカバーできません。そこで、今回は、本試験で出題されてあわてないようにするため、事前届出制と許可制のポイントを押さえておくことにします。
※「事後届出制」については、２月号「国土利用計画法①」の解説をご覧ください。
❶注視区域（事前届出制）
（1） 注視区域の指定
都道府県知事は、地価の上昇が進み、または進むおそれがある区域について、注視区域を定めることができます。
（2） 注視区域については、事後届出との違いを押さえるのがポイントです。事後届出と異なるのは次の点です。
①売りの一団の取引が、事後届出制においては届出の対象外でしたが、事前届出制においては届出の対象となります。
②事後届出制では土地の権利の取得者が単独で届出をしますが、事前届出制では契約の両当事者が連名で行います｡
③届出は、契約締結前に行わなければなりません。
④届出をした後、その日から６週間は、その届出に係る売買等の契約を締結することはできません。ただし、勧告または勧告しない旨の通知を受けた場合は、６週間以内であっても契約を締結できますし、６週間経過してもなんらの通知もない場合も契約可能となります。
⑤事後届出制では利用目的変更の勧告しかできませんでしたが、事前届出制では契約中止や予定対価減額の勧告もできます。
⑥届出をした後、予定対価の額を増額し、または土地の利用目的を変更した場合、あらためて届出をしなければなりません。ただし、予定対価の額を減額する場合は、あらためての届出を必要としません。
＜売りの一団＞
Ａが所有する3,000㎡の土地を３分割して売却する場合、分割後の面積は届出対象面積ではありませんが、分割前の面積が届出対象面積に達している以上、事前届出が必要となります。
❷監視区域（事前届出制）
注視区域よりさらに地価高騰が進んでいる地域において、届出対象面積を引き下げて、より有効な地価対策を行うことができるようにしたのが監視区域です。
監視区域における届出手続は、注視区域とほぼ同じですが、届出対象面積は、注視区域より厳しい数値が都道府県の規則で決められます。
❸規制区域（許可制）
（1） 規制区域
地価高騰が非常に激しい場合は、届出制より厳しい規制が必要になる場合があります。そこで、都道府県知事は、規制区域を指定して、その規制区域内における土地取引については、その面積の大小を問わず、原則として、都道府県知事の許可を受けなければならないとすることができます。
（2） 届出制との違い
①届出制では無届けの契約も有効でしたが、規制区域において許可を受けずに行われた契約は無効となります。
②届出制における無届け取引の罰則は６カ月以下の懲役または100万円以下の罰金ですが、許可制における無許可取引の罰則は３年以下の懲役または200万円以下の罰金です。
③届出制においては、知事の勧告に基づいて利用目的の変更等をした場合、必要があると認めるときは、当該土地に関する権利の処分についてのあっせん等の措置を講ずる努力義務が知事に課せられているだけでしたが、許可制においては、知事が不許可処分をした場合、土地の所有者は、知事に当該土地の買取りを請求することができ、請求があったときは、知事は買い取らなければなりません。
問題を解いてみよう！
- 【Ｑ１】 監視区域に指定された市街化区域内に所在する土地2,500㎡について売買契約を締結しようとする当事者は、契約締結の少なくとも６週間前までに事前届出を行わなければならない。（R6・問22）
- 【Ｑ２】 事前届出又は事後届出が必要な土地について、売買契約を締結したにもかかわらず所定の期間内に当該届出をしなかった者は都道府県知事からの勧告を受けることがあるが、罰則の適用を受けることはない。（R6・問22）
こう考えよう！＜解答と解説＞
Answer1
【解説】監視区域において届出が必要な土地の面積は、「市街化区域2,000㎡以上」より厳しい数値となるので、2,500㎡であれば届出が必要となります。事前届出制の場合、届出後６週間は契約できないとされているので、届出は契約予定の６週間前までにする必要があります。
Answer2
【解説】勧告は届出に対応して行われるものなので、届出をしなかった者に対して勧告が行われることはありませんが、無届契約に対しては罰則の適用があります。
植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を35年以上務める。著書に『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者』（住宅新報出版）、『ケータイ宅建士 2024』（三省堂）などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。