法の動きで振り返る、2021年の不動産業界


新型コロナの感染拡大にはじまり、自然災害、ワクチン接種、東京五輪・パラリンピック、総裁選、解散総選挙など、いつになく慌ただしく“密”であった2021年。不動産業界ではどのような動きがあったでしょうか。

今年施行された主な不動産に関連する法制度を振り返ります。

第1 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の制定

令和2年6月12日に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(以下「賃貸住宅管理業法」)が成立しました。この法律は、大別して、①賃貸住宅管理業務に関する賃貸住宅管理業者の登録制度(2021年6月15日施行)と、②いわゆるサブリースのうちマスターリース契約の適正化に係る措置(2020年12月15日施行)の2つの項目について定めたものです。

1.賃貸住宅管理業者登録制度

これまで賃貸住宅管理業は、宅地建物取引業には該当せず規制する法律がないため、格別の許認可を要せず誰でも営むことが可能でしたが、賃貸住宅管理業法は「賃貸住宅管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければならない。ただし、その事業の規模が、当該事業に係る賃貸住宅の戸数その他の事項を勘案して国土交通省令で定める規模(管理戸数200戸)未満であるときは、この限りでない」と定めています(賃貸住宅管理業法3条)。

(1)「賃貸住宅管理業」とは

登録制度の対象となる「賃貸住宅管理業」とは、管理委託に係る賃貸住宅の「維持保全を行う業務」を主とし、併せて賃貸住宅に係る家賃、敷金、共益費その他の「金銭の管理を行う業務」を行うものとされています。

(2)従来の「賃貸住宅管理業者登録制度」との関係

賃貸住宅管理業法の施行により、従来の大臣告示に基づく「賃貸住宅管理業者登録制度」(告示による任意登録の制度)は、賃貸住宅管理業法の施行日をもって廃止されました。なお、これまで任意登録を受けてきた事業者に配慮し、令和2年6月30日までに大臣告示に基づく登録を受けた事業者については、更新の回数に2を加えた数を記載して登録を行うこととされています。

(3)賃貸住宅管理業者の業務に関する義務づけ

賃貸住宅管理業法に基づく登録業者は、①「業務管理者」の配置、②管理受託契約締結前の重要事項説明、③財産の分別管理、④定期報告について義務づけがなされています。

2.特定賃貸借契約(マスターリース契約)の適正化のための措置

賃貸住宅管理業法では、いわゆるサブリース契約における、貸主(オーナー)とサブリ―ス事業者との間のマスターリース契約を「特定賃貸借契約」といい、サブリ―ス事業者を「特定転貸事業者」とし、賃貸住宅の建設・売買等の際に、マスターリース契約の締結を勧誘する者を「勧誘者」として、マスターリース契約の適正化のための措置を定めています。

賃貸住宅管理業法においては、特定転貸事業者に対しては、図表中の1~5の規制が、勧誘者には図表中1および2の規制がなされています。

図表

特定転貸業者に対する規制

▶こちらもチェック!:賃貸管理業法の業者登録制度が6月からスタート! 
https://magazine.zennichi.or.jp/news/association/5249

▶こちらもチェック!:賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律
https://magazine.zennichi.or.jp/news/association/5846

第2 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法

1.所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年6月6日成立 平成30年11月15日法務省関連規定施行)

①登記官が、所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記等がされていない土地について、亡くなった者の法定相続人等を探索した上で、職権で、長期間相続登記未了である旨等を登記に付記することにより、法定相続人等に登記手続きを直接促す不動産登記法の特例が設けられました。
②所有者不明土地の適切な管理のために特に必要がある場合に、地方公共団体の長等が家庭裁判所に対し財産管理人の選任等を請求可能にする制度が設けられました。

2.「民法等の一部を改正する法律」および「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(相続土地国家帰属法)」(いずれも令和3年4月21日成立)

(1)相続登記の義務化(令和6年4月までに施行予定)

不動産登記法が改正され、これまで任意とされていた相続登記や住所等変更登記の申請が義務化されました。相続人は自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内に所有権の移転の登記を申請する義務を負います(改正不動産登記法76条の2)。遺贈(相続人に対する遺贈に限られる)により所有権を取得した相続人も同様の義務を負います。相続登記の義務化は令和6年4月までに施行される予定ですが、施行日前に相続が開始した場合についても遡及的に適用されることとされています(改正不動産登記法附則5条6項)。したがって、相続登記の義務を履行する期間は、相続の開始と自己が所有権を取得したことを知った日と上記施行日のいずれか遅い日から3年以内ということになります。

(2)相続人申告登記の創設

相続人は相続登記義務を負うことになりましたが、相続登記を行うのは被相続人の出生から死亡に至るまでの除籍謄本や改製原戸籍等を取り寄せるなど負担が大きいため、相続人が相続開始および自分が相続人であることを申し出れば、登記官が職権で申出内容および申出をした者の氏名および住所等を所有権の登記に付記する「相続人申告登記」の制度が設けられました。

(3)相続土地の国庫帰属(平成31年6月1日施行)

相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限られる)によって土地の所有権または共有持分を取得した者等が、法務大臣の承認を受けてその土地の所有権を国庫に帰属させる制度が創設されました。

▶こちらもチェック!:相続登記の義務化
https://magazine.zennichi.or.jp/commentary/5983

第3 宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(令和3年10月)

国土交通省では、個々の不動産取引に際し心理的瑕疵に該当する事案の存在が疑われる場合に、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき義務の解釈について、令和3年10月、ガイドラインをとりまとめました。ガイドラインの対象は居住用不動産についてです。

本ガイドラインの内容は、本号「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」で詳しく述べています。

■2021年版、不動産業にかかわる主な法制度の動き

マンションの管理の適正化の推進に関する法律(一部改正)3月施行
IT重説[オンラインによる重要事項説明]3月開始
相続登記の義務化4月改正、2024年4月までに施行
デジタル社会の形成を図る整備法
[デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律]
5月制定
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律6月施行
土地利用規制法制定
[重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び規制等に関する法律]
6月成立、2022年施行
インボイス制度
[適格請求書等保存方式]
適格請求書発行事業者の受付:
10月開始、2023年10月導入
宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン10月発表

弁護士

江口 正夫